話題のブックホテル「箱根本箱」に泊まる(その1)
先日東京に行った帰り道、以前から雑誌やインスタで見かけてとっても気になっていた「箱根本箱」に泊まってきました。2018年夏にオープンしたこのホテル、12000冊の本に囲まれたいわゆる「ブックホテル」というやつで、日本出版販売株式会社(日販)がブックディレクションを、そして営業オペレーションは雑誌『自遊人』や新潟のおしゃれ温泉宿『里山十帖』を手がける株式会社自遊人が行い、パートナーを組んで開いたプロジェクト。
これまで散々、小奇麗だけど狭くて安い最低限の機能性のみを求めたホステルばかりを愛用してきたわたしですが、今回はちょっと奮発。静けさとか、時間とか、活字と向き合う機会とか、目に見えない贅沢をあえて買おうと思いましてこの「箱根本箱」を選んだわけなのであります。ただ強羅花壇みたいな高級宿に宿泊!っていうのより、コンセプトホテルって目的があってとっかかりやすいですね。
素敵なラウンジでチェックイン
霧雨煙る箱根の山の中。最寄り駅の中強羅までは、箱根湯本からだとケーブルカーや登山電車の乗り継ぎが面倒ですが駅から徒歩4分らしいので便は悪くなさそう。これ?という木の自動ドアが開くとバーンと景色の抜けたロビーホール。「わあ〜」
自動ドアが開くと・・・
まあ素敵なロビーラウンジ
受付もシンプルでアーティスティック
お高そうなミナペルホネン椅子の暖炉
高い本棚に囲まれたラウンジでチェックイン。米粉のドーナツとハーブティーをいただきます。ここで軽く音楽が(いいスピーカーで)流れている以外はとても静かで、目的を持った大人のお客様が多いのもあるせいか、実に落ち着いていて空気が清廉・・・わたしの知ってるホステルとは真逆だわ(当たり前)。
湯本駅前で試食をつまみまくった為おなかいっぱいという失態
椅子と本棚のビジュアルがすでにかわいい
本棚の中にも椅子と机がビルトインされている
あ、あったーーーー!!まさかの選書
このラウンジには衣食住関連の選書がされているらしく、気になる本がいっぱいでワクワク。隣が食堂なせいもあるのかな。手続きを待つ間に見てみると、気になってたレシピ本や食材図鑑やエッセイだらけで目移り。ほうほうほう・・・
(読みたい本だらけだなあ・・・おや?)
(・・・・・・・!!!)
(おいおいマジか!!!!!!!)
なんとお弁当本の書棚にワタクシの著書を発見。錚々たるメンバーの中でこんなシュールな弁当本を選書いただけるなんてなんというありがたき幸せ。超テンション上がりました、ハイもうこのホテル五つ星で決まり決まり〜。お弁当本の好きなゲストの方の目に留まって、手にとって見ていただけることもあるのかしら、なんとも嬉しいことです。ありがとう、箱根本箱の選書の方・・・!
お部屋は全室露天付きでおこもりに最適
箱根本箱は、二階建てで全18室。わたしは比較的安価な一階のツインに宿泊したけれど、二階のお部屋だとハンモックがあったり、もっとお風呂が大きかったり、眺めが良かったりするみたい。でも一階でも雰囲気十分でとても素敵なので全く無問題でした。
一階のテラスツインルーム
ここで本読んでるだけでも幸せに過ごせそう
受付への連絡はiPadな時代
コットンのゆったり館内着と、本を入れて持ち運べるミニトート
お部屋にはテレビと時計がありません。その他は最低限にして十分。ハンガーラックは2ヶ所、室内のにはゆったりしたカーディガンがかかっています。冷蔵庫にはお水、烏龍茶、こだわりのキャロットアップルジュース。バルミューダポットで有機ほうじ茶や煎茶を入れて、魚沼仕込みの美味しいおかきをおやつにいただくことも。
大きめで着やすいカーディガン
こういう細かいところにこだわりがあるのが良き
廊下も打ちっぱなしだし、インダストリアル系?倉庫風?でコストを抑えていて全体的にゴージャスなしつらえってわけじゃないんだけど、気が利いてるねというポイントが多いのがいまどきなホテルだねえ。洗面所はタオルがバス・フェイス・ハンドって三種あって、タオル掛けが温まるようになっていたりね。化粧水などは国産オーガニックコスメ「do organic」でした。やるう。
大体タオル二種類でトイレの手拭きに困りませんか
全室露天付き。小さなお風呂だけど桧の香りがとっても気持ちよい、いい塩梅のお湯にいつでも入れるという贅沢。シャワーもあり。シャンプーなどはこれまたドイツ製オーガニックエココスメ「STOP THE WATER WHILE USING ME!」です。ヒューヒュー。
鳥の鳴き声だけしか聞こえない露天風呂
湯温調整はフロントで一括だそうです
シャワー出しっぱなしで使いなさんなよ、というメッセージのエココスメ
とにかく静かで、本を読んでこもるには最適。館内の本はすべてお部屋持ち込み可能なので、わたしも食事のあとは寝っ転がってひたすら本読んで(ときどき寝落ちして)ました。星のや軽井沢なんかもテレビ無しだけど、そのようなデジタルデトックスで楽しむ宿泊っていうより、本がある分単純に『没頭するのに邪魔になるので無い』という感じなのがちょっと違うね。とにかく、よっしゃ読むぞー!という意欲が否応なしに掻き立てられる環境なのであります。
さっそく館内探検に出かけよう
読書の前に、さて他のゾーンはどんな様子なのかしら?と早速探検に出かけます。18室の建物でさほど広くありませんので作りはシンプル。ちょっとした合宿所とか保養所(実際元保養所らしいですが)の規模なので迷わないよ。
ドリンクコーナー付きの二階ラウンジ
ロビーの本棚に沿って階段を上がると、二階のラウンジへ。ここにもソファが幾つかあって、ドリンクコーナーが備えてあります。この辺は植物に関する選書が多かったな、ボタニカルな図鑑なんか見ながらゆったり座るのもいいですね。
棚の本に目が行くのでなかなかスムーズに上がれない階段
ちょい読みできる踊り場のベンチ
更に上にあがっていくとソファゾーン
ドリンクコーナーにはとてもお高そうなコーヒーマシンのほかに、冷たいハーブティーのポット、スナックとしてミックスナッツも!なんて糖質制限に優しいチョイス・・・変な飴とかお菓をとりあえずで置いてあるよりずっといいけど、罪悪感なくつまめそうで逆に危険。
これまた抜けがよい景色
二階のお部屋からもアクセスしやすい
充実のドリンクコーナー
なんともありがたいナッツフリー
このドリンクコーナーもそうですが、一度チェックインしたら全体的にほっといてくれる感が良いんですよね。スタッフさんも合うと軽く会釈するくらいで、あとは風呂に入ろうが本を読んでようがご飯食べようがお好きにどうぞっていう『構われなさ』が良い。高いホテルって結構丁寧に構われたりするのが面倒くさいことあるもんね。
地下のショートショートシアター
エレベーターで地下に下がると24時間営業のミニシアターが。別所哲也氏が代表の「ショートショートフィルムフェスティバル」と連動した「ShortShorts」から各月テーマに沿った短編映画をエンドレス上映してるみたい。7月は七夕がテーマになっていたよ。
ずーっとやってます
5分〜20分ぐらいの短編なので見やすい
お風呂の隣にあるので待ち合わせとか、順番待ちとか、ちょっとした休憩で座りに入るだけでも使えそう。とっても深いソファなので風呂上がりにボンヤリしてたら絶対寝ちゃうよ。ほら、団体旅行のときにどこで寝てるのか行方不明になる人が一人ぐらいいるじゃないですか、ああいうとき絶対ここにいるよね。
ちょうどいい薄暗さと内容のシュールさ
ここにもドリンクコーナーが!
共同露天風呂も完備しているのだ
お部屋露天だけじゃなくて大きいお風呂にも入れます。そもそものキャパが少ないので貸切になる確率高し。わたしも夜中に外にある露天で虫の声聞きながら独り占め入浴させていただきました。最高オブ最高です。
個人的に熱いお湯が苦手なもので、たいがいの温泉が体に合わないんだけど、ここは40度のちょーうどいいぬるさ加減でいつまでも入っていられる気持ちよさだった。のぼせないから久しぶりに長風呂しちゃったよ。
一階には充実の売店もあります
受付の裏側には広い売店も。といってもその半分が本棚なので(館内の本はすべて読めるし買えます)よく境目がわからないですが、素敵な雑貨や食品が置いてあるので見逃せません。またここ常駐してるレジの人とかがいなくてあんまり売店って感じじゃないフリーダムな空間なのがいいんだよね。
雑貨やアクセサリー類があったり
またここにはここで大量に本があったり
調味料やおやつがあったりします(大地のおやつのラインナップがすごい)
奥の方がキッズコーナーになっていて、大人の雰囲気を邪魔せずこっそり遊べるようになってるのね。絵本がたくさん置いてある小部屋もあって、中の棚が名作揃いなので絵本好きのわたしはすっかり釘付けでした。フランシスとかスーホの白い馬とか久々に見たわあ。昨日食べた物も忘れるのに、昔読んだ絵本の記憶ってなぜか消えないよねーー
おとなしいキッズしか連れてこれなさそう
絵本の小部屋、マジで家に欲しい
浮足立ってなかなか読書に入れない本棚ホテル
ということで、「さあ!お好きな本を!お読みになって!」と両腕を広げて迎えられるようなブックホテル「箱根本箱」。とても新鮮で背表紙を眺めては、あれもいいコレも読みたいと目移りしているだけで時間が経ってしまうありさまでした。
ウロウロしてないでそろそろ読もう。
つづく。